2015年5月27日

ネパールに飛んだ夢之丞

 

 今年のゴールデンウィーク、ピースワンコ・ジャパンはネパールで起きた地震の対応で忙しかった。災害救助犬2頭を含むレスキューチームが捜索・救助のため現場に出動したからだ。残ったスタッフは、200頭近くいる保護犬の世話や、休日でにぎわうドッグランの来客対応に追われた。
 
 ネパールに行った救助犬のうち1頭が、もともと捨て犬だった4歳の夢之丞(ゆめのすけ)。2010年11月、広島県動物愛護センターでまさに殺処分されようとしていたところを、私たちが引き取った。なんともブラックな話だが、二酸化炭素ガスを使って殺処分する機械は「ドリームボックス」と呼ばれている。そこから生還した子犬に夢を託す意味で「夢」とつけ、さらに私自身が名付け親として彼の命を守り抜くという誓いを込めて「丞」の一字を授けた。
 
 以来、夢之丞は「人に捨てられた犬が人の命を救う」という使命を背負い、ピースワンコを象徴する存在になった。見るからに、どこにでもいる和犬の雑種だが、ロゴマークやパンフレットの表紙にも彼の顔を使っている。

 

 

 夢之丞のネパール入りは楽ではなかった。経由地のバンコクまではよかったが、カトマンズ空港の混雑で飛行機が降りられず、給油のためいったんインドのコルカタ(カルカッタ)へ。再度カトマンズを目指したが、また降りられず、今度はバンコクに戻された。結局、目的地に着いたのは日本を出てから丸1日半後。飛行機の貨物室で大半の時間を過ごした夢之丞たちにとって、過酷な旅だったに違いない。
 
 それでも、同行したスタッフによれば、現場での夢之丞は日本にいるときとそれほど変わった様子もなく、懸命に行方不明者の捜索にあたったそうだ。昨年8月の広島土砂災害での活躍が知られていた夢之丞は、日本のメディアはもちろん、英紙インディペンデントをはじめとする海外の新聞でも紹介され、フェイスブックでは連日2千前後の「いいね!」を集めた。
 
 行方不明者の発見という成果は、今回はなかった。犬も人ももっと力をつけるため、帰国後さっそく訓練の体制を強化した。夢之丞もがんばっている。近い将来、夢を形にできるまで、見守っていただきたい。
 
Sippoオリジナル記事はこちらから

いいなと思ったらシェア

おすすめ記事

  • 保護犬を迎えて 片桐家の「ちゃこ」と「はな」

    目次スイートホームちゃことはな犬のいない散歩なんてコキア色のちゃこはなのお迎え愛すべきギャップ「なんなんだ?」といえる愛 スイートホーム 芸人、俳優、造形作家と、多彩に活躍する片桐仁さん。 2頭の保護犬と共に暮らす愛犬家 […]
  • 【遺贈寄付】故人の想いが込められた浜松譲渡センター

    目次ひとりからみんなで犬のぬいぐるみと一緒に犬たちにできること東海で最大の取り組みを「静岡のワンコたちも救う」苦労も超えるオープンに向けて ひとりからみんなで イギリスの音楽家のジョン・レノンは 「ひとりで見る夢はただの […]
  • 手のひらと肉球をつなぐもの

    目次春雷と愛犬音響トレーニング雷の轟音をやり過ごす方法雨宿りの思い出ずぶ濡れでなぜ悪い犬と暮らせば勇気だって湧いてくる 春雷と愛犬   春雷、という言葉がある。 春の到来を伝える雷ともいわれ、 雷鳴に驚き、冬眠 […]
  • 卒業4000頭目!「ごーちゃん」卒業!

    2023年10月29日、ピースワンコでは記念すべき卒業4000頭目のワンコ「ごーちゃん」が、岡山譲渡センターから里親様の元へ卒業していきました! 2023年3月14日に保護された「ごーちゃん」は、当時、推定1歳くらいの野 […]
  • 保護犬を家族に迎える文化を。官民一体で「殺処分ゼロ」へ!

    ピースワンコは広島県の要請のもと、往復4時間かけて定期的に動物愛護センターへ通い、殺処分対象の犬たちを引き出しています。愛護センターは飼育放棄犬や野犬で溢れかえっており、私たちは怖がりな野犬や咬傷犬など、愛護センターでの […]

Supportご支援の方法

「里親になるのは難しい...」 という方にも、様々なご支援をいただいており、
「殺処分ゼロ」を実現するためにはあなたのご支援が必要です。
寄付、ふるさと納税を使ったご支援、ボランティア、物品寄贈など、あなたにあった方法でご検討ください。