2021年10月31日

保護犬は誰でも飼育可能? 受け入れるための条件や迎え方などを解説

犬を飼いたいと思ったとき、まずペットショップを思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。ペットショップの犬だけでなく、新しい家族を待っている「保護犬」もたくさんいます。本記事では、保護犬を受け入れるための条件や迎え方、心構えなどについて解説します。犬を飼いたい人はぜひ保護犬の受け入れも視野に入れて考えてみてください。

保護犬とは?

まず、どんな犬を「保護犬」というのかを見てみましょう。

・飼い主が飼育困難になり、手放した犬
・ブリーダーが劣悪な環境で飼育していた犬
・多頭飼育崩壊した犬
・人と接触したことのない野犬

上記の犬は、飼い主がいなかったりまともな環境で生活できていなかったりします。そんな犬たちが動物愛護センターや保健所、民間の動物愛護団体に保護され「保護犬」となるのです。犬の種類はさまざまですが、比較的成犬が多い傾向にあります。保護犬たちは各施設で一定期間、飼育されながら新しい飼い主が見つかるのを待ちます。ペットショップにはほとんど純血種の子犬しかいませんが、保護犬は純血種や雑種など、多種多様です。

たとえば民間の保護団体である「ピースワンコ・ジャパン」にいる保護犬たちの多くは野犬です。人に馴れていない犬や、病気の犬、怪我をした犬、年老いた犬などもたくさんいますが、施設内での健康管理や人馴れトレーニングのシステムを構築しているため、犬にとって良い環境を作り上げています。

ピースワンコ・ジャパンは、保護犬がいつでも新しい飼い主のもとで暮らせるよう準備しています。

定期的に譲渡会を実施している甲斐あって、年々保護犬の引き渡し件数が増えているのです。また、犬たちの日常生活や犬たちに対してどのような対応をしているか随時HPやSNSで発信しています。犬を飼おうと思ったときに譲渡元の細かい情報がわかると安心ですよね。

保護犬を受け入れてみようと考えている人は、次からの項目をしっかりチェックしてください。

保護犬を受け入れるための条件は?

保護犬の譲渡条件は譲渡元によって異なります。ここでは例として一般的によくある条件を挙げます。※ピースワンコ・ジャパンの条件はこの限りではありません。以下の条件に合わない場合もスタッフがご相談に乗りますので、まずはお気軽にお問い合わせください。

・一人暮らしではないこと(例外あり)
・高齢者ではないこと(高齢犬なら譲渡可など例外あり)
・同居している家族全員の同意を得ること
・日中世話ができる家族がいること(子犬の場合、長時間の留守番は不可)
・マンションの場合、ペット可の契約書を提示すること
・不妊去勢手術を実施すること(ただし、犬の状態による)
・身分証明を提示すること
・譲渡誓約書に署名捺印すること
・室内飼育すること
・犬を飼育できる十分な収入があること(場合によっては源泉徴収票などの提示が必要)

事前のヒアリングで必ず家族構成を聞かれます。譲渡元によっては「リスクを考えて子どもの年齢は15歳以上」などの年齢条件があるところもあります。犬が子どもにケガをさせたり、反対に子どもが犬の扱いがわからずに犬にストレスを与えてしまったりするからです。ただし、保護者が適切に管理できる場合は小さなお子様のいる家庭でも保護犬を迎えられる可能性があります。譲渡元にありのままを申告して相談してみてください。お子様に寄り添える穏やかな性格の犬を紹介してくれるかもしれません。家族構成に限らず、譲渡の可否は細かいヒアリングや現地調査によって決まりますので、受け入れ条件についてしっかり話し合いましょう。

保護犬を受け入れる前の心構え

保護犬は、前の飼い主から捨てられたり、そもそも人に飼われた経験がなかったりします。人間不信の犬や人間を怖がる犬も多いです。それを理解したうえで、犬が安心して暮らせる空間が作れるよう努力しましょう。たとえば、なかなか人に慣れない犬や、吠えたりいたずらしたりする犬に対して、怒ったり騒いだりしないようにしてください。ある程度、犬が生活に慣れるまでは静かに見守りましょう。保護犬は、もともとトラウマを抱えていることが多いため、少しの刺激にも敏感です。飼い始めてすぐに犬と飼い主の間に溝を作らないようにしましょう。犬を飼うとどうしても犬中心の生活になりがちです。たとえば犬を飼うことで家族と旅行に行けなくなるかもしれません。家族の行動がある程度制限される可能性があることを考えたうえで、犬を飼うかどうかを決めてください。保護犬が抱えている苦手なものやトラウマを克服できるよう、トレーニングをして導いてあげましょう。犬は子犬から飼いたいという人もいますが、保護犬は成犬の数のほうが多いです。日中留守番の時間がある家庭では、成犬のほうが向いていることがあります。子犬の時期に家族が留守にすることが多いと、吠えたりいたずらしたりするクセがつくことがあるからです。仕事などでどうしても留守にすることがわかっている場合は、その保護犬がどのぐらいお留守番が可能か、スタッフに確認しましょう。条件に合わせて留守番が上手な犬を紹介してもらえるかもしれません。保護犬は新しい環境に慣れるのに時間がかかる傾向にあります。慣れるまでゆっくりと育てていきましょう。

保護犬との相性を見極めるポイント

保護犬を受け入れるにあたり、なるべく家族のライフスタイルに合った犬を選ぶようにしましょう。ある程度、犬に合わせて生活リズムを変えることがあるかもしれませんが、基本的に今の状況に合う犬を探します。たとえば、マンションの場合は騒音を考慮して小型犬のほうがいいかもしれません。先住犬がいる場合は犬同士の相性も見なければなりません。犬を初めて飼う人は、おとなしい犬が向いている可能性があります。基本的に家族全員で犬との相性を見極め、とくに小さな子どもがいる家庭は、子どもと犬との相性を観察しましょう。子どもは悪気なく犬を雑に扱ってしまうことがあります。急に子どもが犬を触り、犬がびっくりして咬んだら大変です。犬が子どもに対して抵抗がなければ大丈夫ですが、なかには子どもが苦手な犬もいるので、そこをしっかり見てください。いずれにしても受け入れる前に何回か犬に会いに行きましょう。二回、三回と犬に会う回数を重ねていくうちに、自分の家庭環境に合う犬がわかってくるはずです。可能であればトライアルをさせてもらうと、より相性を見極めやすくおすすめです。

保護犬を探して受け入れるまでの流れ

ここでは、保護犬の探し方から受け入れるまでの一般的な流れを説明します。

インターネットで検索

まずはインターネットで保護犬を譲渡しているサイトを探しましょう。主なサイトは以下の通りです。

・動物愛護センター
・民間の保護団体
・保護犬カフェ

実際に犬に会いに行けるように、住んでいる地域から探してみてください。また、地域の情報誌に里親募集ページがあったり動物病院で里親募集をしたりすることもあります。知り合い経由で里親を探している情報を得ることもあるでしょう。

犬に会いに行く

保護犬の譲渡をおこなっている団体に連絡をして、実際に会いに行いきましょう。インターネット上の写真だけで受け入れを決めるのはおすすめしません。実際に犬を見ないと大きさや性格がわかりませんし、万が一相性が合わないと、人と犬両方にとってストレスになるからです。犬に会いに行ったときに、施設の人にそれぞれの犬の状態を詳しく聞いてください。病気や問題行動がある場合は、それらも受け入れするかどうかの判断要素になります。何度か犬と会ってコミュニケーションを深め、一生家族として暮らしていけるか十分考えたうえで受け入れを決めましょう。

譲渡希望の申し込み

受け入れたい犬が決まったら、譲渡希望の申し込みをします。譲渡前に講習会がある場合は参加必須です。次に、申込書の記入や誓約書へサインします。犬を里親に託す愛護センターや保護団体としては、譲渡後に犬が虐待や飼育放棄に遭わないように、引き渡す相手の身元が明らかでないといけません。申込書にはありのままを申告してください。申し込み時にスタッフからヒアリングがあります。家族構成やどんな家に住んでいるか、周囲の環境や生活リズムなどの細かいヒアリングです。譲渡元からのいろいろな確認事項に対してしっかり答えましょう。犬を飼うにあたり、十分な経済力があるかどうかも重要なポイントです。日常のケアや医療費などが必要ですので、その点も考慮したうえで申し込んでください。

受け入れ決定

無事、犬の受け入れが決定したら迎えに行きます。最初のうちは譲渡元が飼育状態を電話や訪問にて確認する場合があります。譲渡後に犬が安全な環境で暮らしているかどうかが重要です。なにか問題や悩みがあれば譲渡元のスタッフに相談しましょう。飼育状況によっては、譲渡元から指導を受けることがあります。保護団体はこれまで保護犬を扱ってきたプロです。犬と人がより良い環境で暮らすためのアドバイスはしっかり聞いておきましょう。

保護犬を受け入れる前に準備すること

先住犬がいないときや初めて犬を飼う場合は、必要な備品を揃えておかなければなりません。ほとんどの犬が室内飼いを推奨されるため、できるだけ家の中はスッキリさせておきましょう。物が多いといたずらされる可能性があるため、噛まれたくないものは犬の目に入らない場所に置いてください。

あらかじめ準備するものは、ハウス(サークル・ケージ・クレート)、トイレ、フード、リードなど。フードは譲渡元で食べていたものを与えるよう指示される場合があります。保護施設では犬の年齢や体格、体調によって適切なフードを与えられていたはずですので、指定されたら従うようにしましょう。先住犬がいて同じフードを与えたい場合など、どうしてもというときは譲渡元に要相談です。

受け入れる犬の年齢次第では、ペット保険への加入も必要かもしれません。

トレーニングのご褒美としておやつやおもちゃも準備しておくのもいいでしょう。基本的な備品を揃えたら、あとは飼い始めてから適宜足りないものを補充していけば大丈夫です。

また、家庭で簡単にできるトレーニングを知っておくのもおすすめです。たとえば以下のようなトレーニングをやっておくと生活しやすくなります。

・トイレトレーニング
・ハウストレーニング
・吠え癖・噛み癖へのトレーニング
・呼び寄せトレーニング

YouTubeや書籍などを見ると、役に立つトレーニングがたくさんあるのでチェックしてみてください。

保護犬を受け入れてからの注意点

受け入れてすぐは、犬が新しい環境に慣れていないためパニックを起こすことがあります。場合によっては逃げ出したり吠えたりいたずらしたり、ということもあります。とくに脱走には注意が必要です。うっかり逃がしてしまわないよう、部屋の環境をしっかり整えてください。万が一逃げたときに捕まえやすいように、首輪からリードを垂らしておくといいでしょう。また、飼い始めてすぐ写真を撮っておくと、万が一脱走してしまったときも犬の情報を拡散しやすいので、念のため備えておきましょう。犬が新しい環境に慣れるまではあまり構いすぎないようにしてください。とくに最初は犬のペースを尊重しつつ、徐々に接近しましょう。また、体調の変化も見逃せないポイントです。新しい環境下では犬が体調を崩すことがあります。しかし犬は体調が悪くてもあまり表に出しません。明らかにおかしいときは症状が進行していることがほとんどです。小さな変化を見逃さないよう毎日体調チェックをおこなってください。保護犬のなかには一度も人に飼われた経験がなかったり、人を怖がったりする犬がたくさんいます。犬を受け入れたら徐々に、普段人が使っているものの音に慣れさせることも必要です。掃除機、洗濯機、電話、テレビ、ドライヤーなどの家電音、金属やチャイムなどの生活音に慣れさせていきましょう。音に過敏に反応する犬は、神経質や臆病なタイプかもしれません。人の笑い声などに驚く犬もいます。急に出す音には注意し、なるべく犬へのストレスを少なくするように心がけてください。

犬を飼うと散歩が必須なため飼い主の体力も必要

どんな犬でも散歩をさせなければなりません。犬にとっての散歩は、運動のほか「社会化」も大きな目的です。社会化とは、犬が社会に順応する力を養うことを指します。犬は経験を通じてさまざまなことを学びます。たとえば犬同士のコミュニケーション方法や外の景色・音・匂いを知ることなどです。散歩の途中にすれ違う人たちにも慣れることで、家に家族以外の人が来ても落ち着いた行動ができるようになるでしょう。また、散歩はストレス発散にもなります。室内飼いが推奨されているとはいえ、一生室内にこもりっきりではストレスが溜まり、問題行動の原因にもなります。飼い主と遊ぶ時間を設けたとしても、犬にとっては外に出てリフレッシュする時間が必要なのです。外の世界に触れさせることでいろいろなことを知り、初めて見るものや人、音に対して過敏に反応しなくなるでしょう。犬を散歩させるために飼い主の体力も必要です。基本的には毎日散歩をさせられるよう、時間と体力に余裕を持っておきましょう。大型犬になるほど犬の引っ張る力が強かったり散歩の時間が長くなったりします。受け入れる犬の大きさや性格などに合わせて散歩をするのが理想です。ちなみに、小さい子どもだけでの散歩は危険が伴いますので、必ず保護者と一緒に散歩に行くようにしてください。

犬の飼育に関する悩みは必ず相談を

初めて保護犬を飼う人、あるいは犬自体を初めて飼う人にとって、飼育に関する悩みや疑問がたくさん出てくるはずです。なにか困ったことが出てきたらまずは譲渡元に相談しましょう。保護犬は施設である程度のトレーニングを受けています。とはいえ、いざ新しい飼い主のもとで生活を始めると慣れるまで落ち着かないことも多いです。必ず犬に関する相談相手を見つけておくことをおすすめします。譲渡元によっては、譲渡前のヒアリング時にかかりつけの動物病院をあらかじめ決めるように言われるところもあります。急病のときにどこの動物病院に行こうかと決めていては遅いからです。

また、しつけに関しては地元で評判のいいドッグトレーナーを調べておくといいかもしれません。犬の問題行動を解決や、子犬のしつけが得意だったりいろいろなドッグトレーナーがいるはずです。犬のトレーニングは基本的に習得までに時間がかかります。しつけに関する悩みが出てきたらすぐにドッグトレーナーに相談しましょう。

飼育に関する悩みは以下のようなものがあります。

・トイレがうまくできない
・毛の掃除が大変
・吠え声が大きく、近所迷惑になるのではないかと気になる
・フードを食べない
・いたずらをする(物を壊すなど)

これらは一例にすぎません。悩みを解決するには専門家に聞くのが一番の近道です。家族内だけで抱え込んだり、放置したりしないようにしてください。

保護犬を受け入れよう

保護犬を受け入れる条件や迎え方、心構えなどを解説しました。新しい家族を待っている保護犬は全国にいます。どの保護団体も譲渡に関する基本的な流れは同じです。譲渡元であるピースワンコ・ジャパンのような保護団体は、いつも保護犬の譲渡先を探しています。保護犬がいつでも新しい家族のもとへ行けるよう、トレーニングを含めて丁寧に飼育をしているのです。犬を飼おうと思っている人はぜひ今回の記事を参考にして、保護犬を受け入れることを選択肢に入れてみてください。

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